歴史
次元ごとの一覧
この頁では、現在知られている極値偶ユニモジュラー格子を次元ごとに挙げ、誰がいつ見つけたかをまとめます。それぞれがどう構成されたかは、次の頁で扱います。
次元までは偶ユニモジュラー格子が完全に分類されているので、極値格子もすべて分かっています。 次元の 、 次元の と ( 次元では上界が なので、どちらも極値格子です)、そして 次元の Leech 格子です。
次元と 次元では極値格子が多すぎて一つずつ挙げることはできず、個数の下界だけが知られています。 次元から先で知られている例は、どれも具体的な構成から得られたものです。例が少ない次元では、表に格子の名前も挙げています。
| 次元 | 上界 | 知られている極値格子 | 最初の公開 |
|---|---|---|---|
| (唯一の例) | 古くから知られる | ||
| 、(この つに限られます) | 古くから知られる | ||
| Leech 格子 (唯一の例) | Leech 1967 [Lee67] | ||
| 個以上 [Kin03, Cor. 5] | — | ||
| 個以上 [Sak26, §1] | — | ||
| 個以上:、、、 | Leech–Sloane 1971 [LS71] | ||
| 複数 | Ozeki 1989 [Oze89] | ||
| 多数 | Quebbemann 1984 [Que84] | ||
| 個以上: | Nebe 2010 [Neb12] | ||
| 個以上 | Bachoc–Nebe 1998 [BN98] | ||
| 個以上(プレプリント) | Sakamoto 2026 [Sak26] | ||
| 知られていない | — | ||
| 知られていない | — | ||
| 個以上:(プレプリント) | 2026 [L112] | ||
| 知られていない | — |
年表
次元以上の極値格子の構成を、年の順に挙げます。極値格子が存在しうる次元を制限する つの結果も含めています。各項目は、結果が最初に公開された年に置いています。公開の形は、学術誌か、査読の前に公開された論文(プレプリント)です。
- 1967 年 Leech が Leech 格子 を発表しました [Lee67]。その 年後、Conway が、ノルム のベクトルを持たない 次元の偶ユニモジュラー格子は Leech 格子に限られることを証明しました [Con69]。
- 1971 年 Leech と Sloane が、 次元の最初の つの極値格子 、 を構成しました。用いたのは 元自己双対符号( つの元からなる体の上の符号。次の頁で説明します)です [LS71]。
- 1975 年 Mallows、Odlyzko、Sloane が上界 を証明し、十分大きな次元では極値格子が存在しないことを示しました [MOS75]。
- 1984 年 Quebbemann が一般的な構成法を導入し、 次元の極値格子を得ました [Que84]。
- 1989 年 Ozeki が、 元符号から 次元の極値格子を得ました [Oze89]。
- 1995 年 Batut、Quebbemann、Scharlau が、 次元の別の極値格子を見つけました。用いたのは、 に の冪根を添加して得られる体(円分体)です [BQS95]。
- 1998 年 Nebe が 次元の つ目の極値格子 を構成しました。同じ論文で、群 が自己同型として作用する 次元の極値格子も構成しています [Neb98]。同じ年に、Bachoc と Nebe が 次元の極値格子を つ構成しました [BN98]。
- 2010 年 Stehlé と Watkins が、 次元の つ目の格子が極値格子であることを証明しました [SW10]。Nebe が、 次元で最初の極値格子 を構成しました(プレプリントは 2010 年、出版は 2012 年)[Neb12]。
- 2011 年 Jenkins と Rouse が、 を超える次元には極値格子が存在しないことを示しました [JR11]。
- 2012 年 Watkins が、 次元の つ目の極値格子を見つけました [Wat12]。
- 2013 年 Nebe が、 次元の つ目の極値格子 を見つけました(プレプリントは 2013 年、出版は 2014 年)[Neb14]。
- 2018 年、2022 年 Shimada が 次元で新しい構成を与え [Shi18]、Quebbemann の構成から 次元の極値格子が多数得られることを示しました [Shi22]。
- 2026 年 Sakamoto が、計算機を用いた証明とともに 次元の極値格子を つ構成しました(プレプリント)[Sak26]。 月には、 次元の極値格子 が、同じく計算機を用いた証明とともに発表されました(プレプリント)[L112]。詳しくは の頁で述べます。
発見の順序
図は、 次元以上の各次元について、最初の極値格子が公開された年を示したものです。極値格子は、次元の小さい順に見つかってきたわけではありません。 次元の極値格子は、 次元のものより 年早く知られていました。また、 次元と 次元が未解決のまま、 次元の例が見つかりました。
これまでのところ、発見までに長い時間がかかったのは、上界 の値が大きくなった直後の次元です。 次元は最小ノルム が必要になる最初の次元で、 次元より後に見つかりました。 次元は最小ノルム が必要になる最初の次元で、まだ例が知られていません。一方、最小ノルム が必要になる最初の次元である 次元は例外で、 元符号を用いた構成によって早い時期に解決しました。Jenkins と Rouse も、 で割り切れる次元はとりわけ難しいと述べています [JR11, §1]。
最小ノルムが大きいほど極値格子が見つけにくくなる理由は、 次元の頁で、質量公式に基づく発見的な議論によって説明します。同じ頁では、同じく最小ノルム が必要な 次元や 次元と比べて、 次元のほうが例の見つかる見込みが高かった理由も述べます。
文献
- [Lee67] J. Leech, Notes on sphere packings, Canad. J. Math. 19 (1967) 251–267. doi
- [Con69] J. H. Conway, A characterisation of Leech's lattice, Invent. Math. 7 (1969) 137–142. doi
- [LS71] J. Leech, N. J. A. Sloane, Sphere packings and error-correcting codes, Canad. J. Math. 23 (1971) 718–745.
- [MOS75] C. L. Mallows, A. M. Odlyzko, N. J. A. Sloane, Upper bounds for modular forms, lattices, and codes, J. Algebra 36 (1975) 68–76. doi
- [Que84] H.-G. Quebbemann, A construction of integral lattices, Mathematika 31 (1984) 137–140.
- [Oze89] M. Ozeki, Ternary code construction of even unimodular lattices, in: Théorie des nombres (Québec, 1987), de Gruyter, 1989, 772–784.
- [BQS95] C. Batut, H.-G. Quebbemann, R. Scharlau, Computations of cyclotomic lattices, Experiment. Math. 4 (1995) 177–179.
- [Neb98] G. Nebe, Some cyclo-quaternionic lattices, J. Algebra 199 (1998) 472–498. doi
- [BN98] C. Bachoc, G. Nebe, Extremal lattices of minimum 8 related to the Mathieu group M₂₂, J. reine angew. Math. 494 (1998) 155–171.
- [SW10] D. Stehlé, M. Watkins, On the extremality of an 80-dimensional lattice, in: ANTS-IX, Lecture Notes in Comput. Sci. 6197 (2010) 340–356.
- [Neb12] G. Nebe, An even unimodular 72-dimensional lattice of minimum 8, J. reine angew. Math. 673 (2012) 237–247. arXiv:1008.2862
- [JR11] P. Jenkins, J. Rouse, Bounds for coefficients of cusp forms and extremal lattices, Bull. London Math. Soc. 43 (2011) 927–938. doi
- [Wat12] M. Watkins, Another 80-dimensional extremal lattice, J. Théor. Nombres Bordeaux 24 (2012) 237–255.
- [Neb14] G. Nebe, A fourth extremal even unimodular lattice of dimension 48, Discrete Math. 331 (2014) 133–136.
- [Shi18] I. Shimada, An even extremal lattice of rank 64, J. Number Theory 185 (2018) 1–15.
- [Shi22] I. Shimada, A note on Quebbemann's extremal lattices of rank 64, J. Théor. Nombres Bordeaux 34 (2022) 813–826.
- [Kin03] O. D. King, A mass formula for unimodular lattices with no roots, Math. Comp. 72 (2003) 839–863. doi
- [Sak26] R. Sakamoto, Two extremal even unimodular lattices of rank 88, preprint (2026). arXiv:2609.15633
- [L112] roiban1344, An extremal even unimodular lattice in dimension 112, preprint (2026), with data and verification programs. GitHub