極値偶ユニモジュラー格子 English GitHub

歴史

次元ごとの一覧

この頁では、現在知られている極値偶ユニモジュラー格子を次元ごとに挙げ、誰がいつ見つけたかをまとめます。それぞれがどう構成されたかは、次の頁で扱います。

2424 次元までは偶ユニモジュラー格子が完全に分類されているので、極値格子もすべて分かっています。88 次元の E8E_8⁠、1616 次元の E8⊥E8E_8\perp E_8 と D16+D_{16}^{+}(1616 次元では上界が 22 なので、どちらも極値格子です)、そして 2424 次元の Leech 格子です。

3232 次元と 4040 次元では極値格子が多すぎて一つずつ挙げることはできず、個数の下界だけが知られています。4848 次元から先で知られている例は、どれも具体的な構成から得られたものです。例が少ない次元では、表に格子の名前も挙げています。

次元 nn上界知られている極値格子最初の公開
8822 E8E_8(唯一の例)古くから知られる
161622 E8⊥E8E_8\perp E_8⁠、D16+D_{16}^{+}(この 22 つに限られます)古くから知られる
242444 Leech 格子 Λ24\Lambda_{24}(唯一の例)Leech 1967 [Lee67]
323244 10710^7 個以上 [Kin03, Cor. 5]—
404044 105110^{51} 個以上 [Sak26, §1]—
484866 44 個以上:P48pP_{48p}⁠、P48qP_{48q}⁠、P48nP_{48n}⁠、P48mP_{48m}Leech–Sloane 1971 [LS71]
565666 複数Ozeki 1989 [Oze89]
646466 多数Quebbemann 1984 [Que84]
727288 11 個以上:Γ72\Gamma_{72}Nebe 2010 [Neb12]
808088 44 個以上Bachoc–Nebe 1998 [BN98]
888888 22 個以上(プレプリント)Sakamoto 2026 [Sak26]
96961010 知られていない—
1041041010 知られていない—
1121121010 11 個以上:L112L_{112}(プレプリント)2026 [L112]
1201201212 知られていない—
知られている極値偶ユニモジュラー格子です。「以上」は、ほかにも例がありうることを表します。7272 次元の年はプレプリントの年です。誰がいつ見つけたかは、[Sak26, §1] と各原論文に基づいています。

年表

2424 次元以上の極値格子の構成を、年の順に挙げます。極値格子が存在しうる次元を制限する 22 つの結果も含めています。各項目は、結果が最初に公開された年に置いています。公開の形は、学術誌か、査読の前に公開された論文(プレプリント⁠)です。

  • 1967 年 Leech が Leech 格子 Λ24\Lambda_{24} を発表しました [Lee67]⁠。その 22 年後、Conway が、ノルム 22 のベクトルを持たない 2424 次元の偶ユニモジュラー格子は Leech 格子に限られることを証明しました [Con69]⁠。
  • 1971 年 Leech と Sloane が、4848 次元の最初の 22 つの極値格子 P48pP_{48p}⁠、P48qP_{48q} を構成しました。用いたのは 33 元自己双対符号(33 つの元からなる体の上の符号。次の頁で説明します)です [LS71]⁠。
  • 1975 年 Mallows、Odlyzko、Sloane が上界 min⁡Λ≤2⌊n/24⌋+2\min\Lambda\le 2\lfloor n/24\rfloor+2 を証明し、十分大きな次元では極値格子が存在しないことを示しました [MOS75]⁠。
  • 1984 年 Quebbemann が一般的な構成法を導入し、6464 次元の極値格子を得ました [Que84]⁠。
  • 1989 年 Ozeki が、33 元符号から 5656 次元の極値格子を得ました [Oze89]⁠。
  • 1995 年 Batut、Quebbemann、Scharlau が、5656 次元の別の極値格子を見つけました。用いたのは、Q\mathbb{Q} に 11 の冪根を添加して得られる体(円分体)です [BQS95]⁠。
  • 1998 年 Nebe が 4848 次元の 33 つ目の極値格子 P48nP_{48n} を構成しました。同じ論文で、群 SL2(29)\mathrm{SL}_2(29) が自己同型として作用する 5656 次元の極値格子も構成しています [Neb98]⁠。同じ年に、Bachoc と Nebe が 8080 次元の極値格子を 22 つ構成しました [BN98]⁠。
  • 2010 年 Stehlé と Watkins が、8080 次元の 33 つ目の格子が極値格子であることを証明しました [SW10]⁠。Nebe が、7272 次元で最初の極値格子 Γ72\Gamma_{72} を構成しました(プレプリントは 2010 年、出版は 2012 年)[Neb12]⁠。
  • 2011 年 Jenkins と Rouse が、163 264163\,264 を超える次元には極値格子が存在しないことを示しました [JR11]⁠。
  • 2012 年 Watkins が、8080 次元の 44 つ目の極値格子を見つけました [Wat12]⁠。
  • 2013 年 Nebe が、4848 次元の 44 つ目の極値格子 P48mP_{48m} を見つけました(プレプリントは 2013 年、出版は 2014 年)[Neb14]⁠。
  • 2018 年、2022 年 Shimada が 6464 次元で新しい構成を与え [Shi18]⁠、Quebbemann の構成から 6464 次元の極値格子が多数得られることを示しました [Shi22]⁠。
  • 2026 年 Sakamoto が、計算機を用いた証明とともに 8888 次元の極値格子を 22 つ構成しました(プレプリント)[Sak26]⁠。1010 月には、112112 次元の極値格子 L112L_{112} が、同じく計算機を用いた証明とともに発表されました(プレプリント)[L112]⁠。詳しくは L112L_{112} の頁で述べます。

発見の順序

図は、2424 次元以上の各次元について、最初の極値格子が公開された年を示したものです。極値格子は、次元の小さい順に見つかってきたわけではありません。8080 次元の極値格子は、7272 次元のものより 1212 年早く知られていました。また、9696 次元と 104104 次元が未解決のまま、112112 次元の例が見つかりました。

24487296120 19601970198019902000201020202030 未解決 公開の年 次元 24 次元: Leech、1967 年 24: Leech 48 次元: Leech–Sloane、1971 年 48: Leech–Sloane 56 次元: Ozeki、1989 年 56: Ozeki 64 次元: Quebbemann、1984 年 64: Quebbemann 72 次元: Nebe、2010 年 72: Nebe 80 次元: Bachoc–Nebe、1998 年 80: Bachoc–Nebe 88 次元: Sakamoto、2026 年 88: Sakamoto 112 次元: L₁₁₂、2026 年 112: L₁₁₂ 96104120
各次元で最初の極値格子が公開された年です(7272 次元はプレプリントの年)。右端の白抜きの点は、例が知られていない次元です。灰色の線は、上界が上がる 2424 の倍数の次元を示します。

これまでのところ、発見までに長い時間がかかったのは、上界 2⌊n/24⌋+22\lfloor n/24\rfloor+2 の値が大きくなった直後の次元です。7272 次元は最小ノルム 88 が必要になる最初の次元で、8080 次元より後に見つかりました。9696 次元は最小ノルム 1010 が必要になる最初の次元で、まだ例が知られていません。一方、最小ノルム 66 が必要になる最初の次元である 4848 次元は例外で、33 元符号を用いた構成によって早い時期に解決しました。Jenkins と Rouse も、2424 で割り切れる次元はとりわけ難しいと述べています [JR11, §1]⁠。

最小ノルムが大きいほど極値格子が見つけにくくなる理由は、112112 次元の頁で、質量公式に基づく発見的な議論によって説明します。同じ頁では、同じく最小ノルム 1010 が必要な 9696 次元や 104104 次元と比べて、112112 次元のほうが例の見つかる見込みが高かった理由も述べます。

文献

  • [Lee67] J. Leech, Notes on sphere packings, Canad. J. Math. 19 (1967) 251–267. doi
  • [Con69] J. H. Conway, A characterisation of Leech's lattice, Invent. Math. 7 (1969) 137–142. doi
  • [LS71] J. Leech, N. J. A. Sloane, Sphere packings and error-correcting codes, Canad. J. Math. 23 (1971) 718–745.
  • [MOS75] C. L. Mallows, A. M. Odlyzko, N. J. A. Sloane, Upper bounds for modular forms, lattices, and codes, J. Algebra 36 (1975) 68–76. doi
  • [Que84] H.-G. Quebbemann, A construction of integral lattices, Mathematika 31 (1984) 137–140.
  • [Oze89] M. Ozeki, Ternary code construction of even unimodular lattices, in: Théorie des nombres (Québec, 1987), de Gruyter, 1989, 772–784.
  • [BQS95] C. Batut, H.-G. Quebbemann, R. Scharlau, Computations of cyclotomic lattices, Experiment. Math. 4 (1995) 177–179.
  • [Neb98] G. Nebe, Some cyclo-quaternionic lattices, J. Algebra 199 (1998) 472–498. doi
  • [BN98] C. Bachoc, G. Nebe, Extremal lattices of minimum 8 related to the Mathieu group M₂₂, J. reine angew. Math. 494 (1998) 155–171.
  • [SW10] D. Stehlé, M. Watkins, On the extremality of an 80-dimensional lattice, in: ANTS-IX, Lecture Notes in Comput. Sci. 6197 (2010) 340–356.
  • [Neb12] G. Nebe, An even unimodular 72-dimensional lattice of minimum 8, J. reine angew. Math. 673 (2012) 237–247. arXiv:1008.2862
  • [JR11] P. Jenkins, J. Rouse, Bounds for coefficients of cusp forms and extremal lattices, Bull. London Math. Soc. 43 (2011) 927–938. doi
  • [Wat12] M. Watkins, Another 80-dimensional extremal lattice, J. Théor. Nombres Bordeaux 24 (2012) 237–255.
  • [Neb14] G. Nebe, A fourth extremal even unimodular lattice of dimension 48, Discrete Math. 331 (2014) 133–136.
  • [Shi18] I. Shimada, An even extremal lattice of rank 64, J. Number Theory 185 (2018) 1–15.
  • [Shi22] I. Shimada, A note on Quebbemann's extremal lattices of rank 64, J. Théor. Nombres Bordeaux 34 (2022) 813–826.
  • [Kin03] O. D. King, A mass formula for unimodular lattices with no roots, Math. Comp. 72 (2003) 839–863. doi
  • [Sak26] R. Sakamoto, Two extremal even unimodular lattices of rank 88, preprint (2026). arXiv:2609.15633
  • [L112] roiban1344, An extremal even unimodular lattice in dimension 112, preprint (2026), with data and verification programs. GitHub